カプセルホテルで安眠の旅
カプセルホテルに泊まってみた
2月末、ニセコへ4泊5日の一人旅をした。宿はカプセルホテル。中華系のオーナーが経営していて、1泊3,300円。シーズン中はその3倍くらいするらしいから、オフシーズンだからこその価格だろう。
部屋にはカプセルが4つ。日本人の宿泊客は私以外にいなかった。
カプセルホテルに泊まるのは初めてだったけれど、これが思った以上に楽しい。なぜかというと、「自分で環境を作る」余地があるからだ。

普通のホテルは、お金を払ってすでに整えられた空間を使う。いいベッド、いいアメニティ、いい照明。それはそれで快適なのだけど、やってもらう快適さであって、自分が介入する余地はあまりない。
カプセルホテルは違う。最低限の空間しかないから、快適にしたければ自分で工夫するしかない。私は自分の枕カバーを持っていった。耳栓も、リラックスできる香りのものも持参した。カプセルの中でストレッチもした。限られたスペースの中で、自分なりの「いい夜」をどう作るか。その工夫のしがいが、むしろ楽しいのだ。
シャワールームも共用だから、いつ使うかはお互いのコミュニケーションで決めていく。「私はもう入ったからどうぞ」と声をかけたり、かけられたり。考えてみれば実家でも普通にやっていることなのだけど、それを中国語や英語でやるのが新鮮だった。ちょっとした生活のやりとりが、そのまま語学の練習にもなる。この適度な緊張感が、私にはすごく良かった。
ちょっとした不便を自分で埋めていく。その作業自体が元気の刺激になるというか、活力になる。こういう感覚が好きなタイプの人には、カプセルホテルは断然おすすめしたい。

不眠の荒療治
ここからは思いがけない副産物の話。
最近の私は、夜中に何度も目が覚める。起きるとつい手元のスマホを見てしまい、AIと話し始めて気づいたら1時間。昼もパソコン作業が多いから、生活リズムがじわじわ崩れていく。調子がいい時期もあるのだけど、崩れるときはこのパターンにはまる。
カプセルホテルでも途中覚醒はあった。でも、その後の行動がまるで違った。
隣のカプセルには人がいる。あまり音は立てられないから、自然と静かに過ごす姿勢になる。カプセルの中は光が漏れないのでスマホを見ても迷惑にはならないのだけど、そうしなかった。朝からスキーに行きたいし、ニセコにいられる時間は限られている。お金もかかっている。日中眠たくなったらもったいない。だから夜はちゃんと寝よう——そう思って、水筒のお湯をちびちび飲んだり、カプセルの中でストレッチをしたりして、体を休めることに集中した。
朝早くから夕方ギリギリまでスキーをして、体をしっかり使い切る。夜は静かに休める。このサイクルが、驚くほど効いた。
環境を変えること、体を使うこと、「明日やりたいことがある」という意識を持つこと。この3つが揃ったとき、睡眠は勝手に改善に向かうのかもしれない。

カプセルの外で生まれる会話
カプセルホテルの面白さは、寝る場所だけじゃなく、人との距離感にもある。
一つの部屋に4つのカプセル。カプセルの中はプライベートだけれど、外に出れば同室の人と顔を合わせる。この距離感がちょうどいい。
同室にオーストラリアの女の子がいた。少しだけ話した。靴下とスパッツ、両方に穴が開いていてもまったく気にしていない。靴下だけならまあ誰にでもあるけれど、両方ともとなると、もはや清々しい。
もう一人、中国人の女の子とはよく話した。イギリスに住んでいて、スキーを3年ほど熱心に練習しているという。イギリス人のスキーの先生と毎日滑っているらしい。
私は5歳からスキーをしている。でも完全に我流で、怖くなく滑れはするけれど、きれいなフォームとは言いがたい。彼女からスキーのコツを色々教えてもらった。上半身は進行方向に向けること、意識の置き方。短い時間だったけれど、すごく勉強になった。最終日の前日には一緒に少しだけ滑ることもできた。
会話は中国語だった。日常会話はできる。中国語で話していて思ったのは、外国語で話すときの独特の「楽さ」だ。日本語で話すと、どうしても言葉の選び方に気を遣う。敬語とか距離感とか、日本語特有の気遣いが自動的に作動する。外国語だとそれがない。会話が軽くなる。

工夫することが元気になる
カプセルホテルに泊まったのはこれが初めてだ。でも「カプセルホテルって楽しいな」というのが率直な感想だった。
今回楽しめた理由を考えると、同室の人たちがみんな一人旅を楽しんでいる人だった、というのは大きいかもしれない。国籍はばらばらでも、「一人で来て、自分のペースで過ごす」というマインドが共通していて、自然と共感できるものがあった。日本にいながら異文化の空気が漂う環境も新鮮で、中国語を使う機会にもなった。
この旅でわかったのは、不便さを自分で工夫して埋めていく過程自体が楽しい、ということ。スープジャーでお粥を作るのも、枕カバーを持参してカプセルを自分の空間にするのも、外国語で見知らぬ人と話すのも、全部「試行錯誤してやりきる」という同じ感覚でつながっている。
次の一人旅も、たぶんカプセルホテルを選ぶ。
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