スープジャー粥旅のススメ
ニセコ5日間、外食費3500円の実験記。
自炊を選んだ理由
2026年2月27日から5日間、
ニセコへの一人旅は、カプセルホテルに泊まりながら、食事のほとんどを家から持参した食材でまかなった。
きっかけは単純で、ニセコのスキー場の昼食は特別に高い。リフト代を払ったあとで、ゲレンデのレストランに並んで1食2000円以上を出すのは、一人旅の財布には堪える。
それだけなら「旅の出費」で割り切れるのだけど、もう一つ事情がある。グルテンフリーを続けているのだ。IBSがあって、グルテンを抜くと食欲も体調も整いやすいと気づいた。醤油が入っているものは避けきれないから完全にはできていないけれど、昨年9月から始めて、効果はちゃんと出ている。
問題は、現地での食探し。「何が入っているかわからない」食べ物を前に、食べられるものを探して回ると、それだけで時間が消えていく。限られた旅の時間を、食の調達に使いたくない。滑りたいし、景色を見たいし、温泉でぼーっとしたい。だから、自分で食べるものを設計することにした。

スープジャーとの一日
やり方はシンプル。
朝カプセルの中で目覚めたら、まず、スープジャーに玄米を仕込む。朝食バイキング会場へ向かい、熱湯をスープジャーに入れてから、腹ごしらえ。朝食を終えたら、ジャーの熱湯を交換する。 昼はそのジャーをリュックに入れてゲレンデへ。スキー場の混んだレストランに並ぶかわりに、休憩所で粥を食べる。冷えた手でジャーを包むと、じんわり温かかった。高級な外食をしている人たちが多い中、最初は少し気になったが、やってみると何てことなかった。夜はホテルに戻って、朝別に仕込んでおいたジャーの粥を食べる。
午後の斜面も、体が素直についてきた。腹が冷えず、血糖値が安定していると、体は正直で、余計なことを考えなくていい。食べ損ねたとき、あるいは無理に食べ過ぎたときの「なんとなく重い」感覚がなかった。

失敗と成功の記録 — 作り方
スープジャー粥の作り方には、たどり着くまでに失敗があった。
失敗パターン
- スープジャー(400ml)を5分以上予熱する
- 湯を捨てる
- 玄米(大匙2杯程)・粟・切り干し大根・高野豆腐等をスープジャーに入れる
- 熱湯を注ぐ
- 数時間後に食す
結果、芯が残る硬いおかゆになった。3回か、4回ほど失敗した。予熱を長くしても、乾物を減らしても変わらなかった。
原因は単純。予熱したジャーに冷えた食材を後から入れると、中の温度が一気に落ちる。そこに熱湯を足しても、もう追いつかない。
成功パターン
- 玄米・粟・切り干し大根・高野豆腐等をスープジャーに入れる
- 熱湯を注ぐ
- 5分以上予熱する(食材ごと温める)
- 湯を捨てる ← 蓋を少しだけ開けて傾けると、案外湯だけ簡単に捨てられる
- 再び熱湯を注ぐ
- 数時間後に食す
この順番に変えただけで、数時間後の温度が明らかに高く保たれ、玄米も粟もしっかり粥状になっていた。食材を先にジャーの中で温めておく、というのがポイント。

食材・持ち物リスト
主食
- 玄米・粟(7食分持参。パック飯なら同じ荷物量で3食が限界だったはず)
乾物
- 切り干し大根、高野豆腐、きくらげ、干し椎茸、のり
味付け
- ウユニ塩湖の塩(モンベルのBPAフリーボトルに入れて携帯)
- 無印良品のインスタント味噌汁(豚汁がお気に入り)
あったらよかったもの
- 漬物全般:梅干し、たくあん、塩昆布、春雨
塩昆布や梅干しは、粥との相性が最高のはずなのに、今回は持参しなかった。味噌汁の塩味でなんとかやり切ったが、漬物があれば完璧だったと思う。次の旅への宿題にしておく。春雨も短時間で作れる軽量な麺として、バリエーションに加えてもよかった。
かさばりについても書き添えておく。玄米・乾物はパック飯に比べて圧倒的にコンパクトだ。7食分の玄米と粟をスーツケースの片隅に収められたが、同等のパック飯を持っていくことはまず無理だっただろう。
先人の知恵への敬意
4日目、粥を仕込みながら、ふと思った。
米は常温保存できて、乾物も持ち運べる。漬物もそもそも長期保存のために生まれた加工食品だ。この3つが「旅に持ってこい」の食材なのは、単なる偶然ではなく、長期保存できるよう先人たちが工夫を凝らしてきた結果なのだろう。
これらの方法により、人間は飢えの克服だけでなく、 大航海時代のような長期の旅や、 余った食料の貿易が可能となった。
現代が加えたのは、スープジャーという保温容器だけで、あとは同じだ。湯を沸かし、食材を入れ、蓋をする。火も、キッチンも、いらない。感動…!
実験の結果と、次の旅へ
5日間ニセコに滞在し、外食は3回した。ホテルの朝食バイキングを含めると7回。残り8回は持参した食材で済ませた。
外食4回の内訳は、初日の友人との昼のそば、夕食のさば味噌定食、3日目の刺身定食ランチ、最終日の空港での限定アイス。合計3500円だった。
毎日外食していたら、それぞれの食事はただの食事になっていたかもしれない。「たまに」だから、目を閉じてしっかり味わえた。おいしさが一入だった。
貧乏旅行と言ってしまえばそれまでだけど、今回の実験で得たのは節約の話だけじゃない。自分の食を自分で設計できると、旅の不安がひとつ減る気がする。あと、粥を仕込みながら「昔の人も工夫してきたんだよな」と思った瞬間が、地味によかった。
この設計を、次は海外旅行でも試したい。ご当地の食材を楽しむのも旅の醍醐味だが、それをおかずに、食の土台だけは自分で確保しておく。お湯さえ手に入れば、何とでもなるはず。
